『教養としてのスーツ』(二見書房)のコラムを広く知っていただきたいということで、無料試し読みができるようにします。具体的にはこのブログでPDFファイルをダウンロードできるようにします。リンクは自由に使ってもらって構いません。より多くの人に伝わるのであれば、書き手として、それは望外の喜びです。

第一回目は、最後のコラム5「お手入れを継続させる方法」。

コラム5(←ここをクリックすると、PDFがダウンロードできます。)

 

持ち物のエクセルの管理は、僕の知る限りアパレルの雑誌や本では言っていないことだけれど、装うことも仕事の1つと捉えるならばとても大切なことだと思っている。いわば、在庫管理でもあるし、新しいスーツやアイテムの仕入れのタイミングや組み合せを考えるにも、ひと目で概観できることが必要とされるから。

財務諸表や顧客からのアンケート集計、なんでもいいけれど、そういったマクロの情報を俯瞰することなく、意思決定することは難しい。人の脳はそれほど性能が良くなく、短期的に覚えられるものも多い人で7,8個だと聞いたことがある。いっときの感情やたまたま目にした情報だけで意思決定をするのは、勘定科目1つの動きや、数枚の顧客アンケートを見ただけで、経営戦略を決めるようなものだと思う。ミクロが不要とはいわないが、マクロとミクロ双方から検討することで、行動の精度は高まる。

 

物理的に確認するというのもあり得るのだけれど、クローゼットと靴箱が一緒の人って少ないと思う。また、「スーツどうしようかな?」とか「ボーナス入ったら何買おうかな?」とぼんやり考えるときがあると思うけれど、結構「感情」に左右されるし、出張中だったりお店の中だったりというように、なかなか家で「うーん」なんて自分のスーツたちとにらめっこしながら、次に買うものを考える人は少ないはず。

感情に話を戻すと、同僚が新しい時計を手に入れていれば、時計ばかりが目についたり、寒くなればオーバーコートやマフラー、手袋なんかが目についたりというように、絶対コレがこのシーズンに必要と言って買い物をすることも少ないのではないだろうか。何年かビジネスマンをしていれば、ある程度の「在庫」も持っている。同時に、シーズンごとにすべてを入れ替えることも、経済的に許される人のほうが少ないだろう。そもそも、そういった買い方って、エコでもないし無粋な気もする。タイトルこそ「お手入れを継続させる方法」であるものの、「服について思考する方法」でもいいなと感じつつ書いていた。

 

確かに、意思決定の最後の最後、色や生地感といった部分の選択はお店でやるしかない。でも、それ以前の「思考」というのは欠かせないし、そのツールは必ず必要になる。それがエクセル一枚。

『7つの習慣』の言葉を借りるなら、「知的創造は物的創造に先立つ(たしか第2の習慣に記載されていたかな?)」はずで、見た目という仕事も、知的創造がないことには実現には結びつかない。仮に、「いや服ってクリエイティブな領域でしょ?俺はセンスがあるから、その場で決められるから大丈夫。」って言う人がいたとして、この言葉の「服」を「仕事」に置き換えてみてほしい。

 

彼は、「いや“仕事”ってクリエイティブな領域でしょ?俺はセンスがあるから、その場で決められるから大丈夫。」なんて言うわけだ。

いい仕事ができるとは、僕は思えない。

 

「いや、“仕事”って確かにクリエイティブな領域もあるけれど、やはり準備には準備を重ね、それでもミスってしまうことがあるよね。都度、選択を迫られるけれど、いつまで経ってもこれがベストか?って悩んでしまうよ。」という人のほうを、僕は信頼する。

 

仕事の装いについても同じだと思う。偏った考え方かもしれないけれどね。

 

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