眼の前には、2018年6月26日の日本経済新聞夕刊の2面がある。

まず、簡単に要約しておく。

  • 暑い季節に、ネクタイをしなければならない場合は、ニットやフレスコの生地がおすすめである。
  • ネクタイをしない場合は、チビタイ(ピンバッチ)をフラワーホールに挿すことも良い。
  • ワイシャツの第2ボタンを彩るアンルースは特徴的なデザインで、知らない人とも話を弾ませる効果もある。
  • ワンタッチネクタイは、もともと結び目があるため、すぐに胸元を整えることができる。
  • 日本メンズファッション協会の川崎和則広報部長は、「ドレスコードが定まっていた場合などを除けば、ファッションは当然ながら自由。自由にファッションを選び、夏を快適に過ごすべきだ。」と指摘する。

蛇足ながら、新聞の写真に使われているマネキンは半袖の“涼しげな”シャツを着ていながら、手にはジャケットを持っている。ちなみに、タイトルは、『夏の胸元涼しくオシャレ』である。

僕がコメントを求められたらもう少しまともな記事を書くのにと思いつつ、冷ややかな目でこの記事を見てすぐに捨てることにしたのだが、たぶん僕が書く記事よりもこの記事を読む人が多いことを想像すると、とても気持ちの良くない日本のビジネス街が思い浮かんだ。だから、記事を取っておいた。そして、批判というか(僕は批判が好きではない)、訂正をしてみようと思ってブログの記事を書き始めた。

たくさん言いたいことはあるのだけれど、その批判を1つに絞り、日本人に響くように言い換えるとこのようになる。

 

「自分のために装うのではなく組織のために装うならば、どういう判断をするか自問して行動してください。」

 

たぶん、良識のある大人ならばこの一言であらゆる失敗をなくしてくれると期待している。組織のために装うならば、きっと次のような解答が期待できる。

  • ネクタイをしない場合でも、アクセサリーが組織のプラスになる場合は除き、基本的には付けない。
  • ワイシャツの第2ボタンは適切に留めておく。信頼関係が大切なのであって、オシャレな人と見なされて好感を抱かれるのは、組織ではなく、個人なのだから。
  • ワンタッチネクタイなどという利便性が周囲にバレた途端に、“取り繕った”感はより一層強調されてしまう。組織に対してそんなリスクがある行動を個人的に取れるわけがない。適切なネクタイを締めておく。
  • ドレスコードが決まっていなくとも、自分に自由はない。ファッションを楽しむのはオフタイムであり、オンタイムには組織としての立ち振舞が優先される。
  • 半袖シャツを着るならば、ジャケットは不要。ただし、通常手首より下を見せるに留めるべきという紳士的なルールや、ジャケットを着用することはマナーであるのであれば、長袖のシャツとジャケットを着用するべきである。
  • 『夏の胸元を涼しくオシャレ』というのは、週刊誌の袋とじでありそうな水着を着た女性の特集なのだろうか?

 

なお、批判だけは誰でもできるので、僭越ながら私見を。

Vゾーン及びその周囲だけで涼しさを示すことには限界がある。個人的には、淡いネクタイも付けたくない。“軽さ”というものは、“信頼を積み重ねること”とは逆行するように感じてしまう。最も簡単なのは、ジャケットの素材を変えるといった面積の多い部分から変えていくことだが、Vゾーンに絞るならば、柄がなく、見た目にごちゃごちゃしていない、ソリッドタイを用いる(ネクタイ姿が暑苦しいのは、不可避だろう)。その上で、お客さんや相手に「どうぞネクタイは外してください」と言われて、「それでは、申し訳ございません」と言いつつタイを取り、目を見て一礼する。

回りくどいけれど、これが初対面の人でも通用し、年代も問わず、好感を持たれる対応であると考えている。新しいアクセサリーを買い揃える必要もなければ、効率的な商品を比較検討する必要もない。ただ、相手にとって敬意を示す方法を考え、相手がリラックスするように求めれば、それに応える。常に主導権は相手にあるということを、服装と態度で示すのだ。たぶん、これが世界中で通用する、Customer Firstの精神だと思う。

 

 

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