社会人になる前だったか、なってから数年経ったくらいだろうか。茶色の靴を履いている大人が全員かっこよく見える時期があった。

ラグジュアリーブランドの鞄を持っている人が全員オシャレに見えたり、NIKEの最新のスニーカーを履いていればなんだか自分も最先端を行く若者のように感じられたりする感覚に似ているだろうか。

 

それから10年以上が経って、日頃からジャケットを着て、革靴も履いている。周囲と比較すると、おそらく靴に対してのこだわりも強いはず。週末に靴磨きをしながら、「はて、茶色の表革(スムースレザー)の靴がほしかったのに、一足もないなぁ」なんてことをふと考えていた。なんでだろうなぁなんて、理由をいつものように探る時間を過ごすことになった。

 

確かに、鞄の革の部分、ベルト、靴は同じトーン、素材で合わせほうが全体の統一感が出るから好ましいというルールというか、暗黙知というか、とにかくそういうものが存在するのは多くの人が知るところ。僕個人の線引で言うなら、“常時体に身に着けておく革については揃えるべき”、なので、鞄は考慮に入れない。そう考えれば、コストだけで見た場合、ベルト代のPayだけとなる。僕が得られるものは、茶色という20代のときに夢見た?社会人スタイルなわけで、コスパとしては悪くなさそうなのだ。でも、なぜそうしないのか。これだけでは説明できないことに、若干締りの悪さを覚えつつ、月曜日を過ごすこととなった。

 

数時間後、2つ目の理由を思いつく。それは、柄や色の問題だ。無彩色を除き、最大でも2色×2柄で全体のコーディネートの統一感を維持する。3色になったり、2柄以上になったりすると、其のいで立ちは、もはや罰ゲームでしかない。茶が増えるということは、1色増えてしまう。当然、スーツを着ている時点で1色使っている(グレーは着ない。すべてネイビーベースだけ)。この時点で、ネクタイの色はこれ以上色を用いることができないので、青系統か茶系統という縛りを受けてしまう。

シャツはサックスブルーでも白でも持ってこれるが、まぁ、青系統か茶系統のネクタイなら、サックスブルーを選ぶだろうなぁとか考えるとシャツまで決まってしまう。でも、まぁ、ベーシックな組み合わせだし、これが理由で茶色を選ばないというわけでもないなぁとか思っていたときに、まぁ、当然といえば当然なんだが、茶には多くの種類があるという事実に気がつく。

 

あぁ、結局は手入れの問題だ、と茶を選ばない最大の理由に行き着いた。

 

茶を取り入れると、革製品を手入れに使う乳化クリームを買うことはもちろん、それを刷り込むための豚毛のブラシも必要になる。さらに、ペネトレイトブラシ(小さい豚毛のブラシ)も必要だし、拭き取るクロスもそれ用に準備する。そうやって手入れに必要なものを揃えると、結構なスペースを必要とする。また、手入れの工程上、黒とは別に行うので時間も倍かかるイメージ。

 

たった1色のために、そこまで負担を増やしたくないという本音に行き着いて、思考を閉じようと思ったが、ふと靴箱を見てみた。

6足中2足が茶色。

ただし、スウェード。専用のブラシも必要なければ、クロスも必要じゃない。必要なのは、補色クリームの一つだけ。あとは、黒色と同じでいい。とにかくスウェードは表革に比べて手入れが簡単なのだ。

 

そう考えてみると、茶色は黒よりもカジュアルだけど、(選んだ人は)とてつもなく勤勉。

 

そして、、、あ、6足のうち4足がスウェードという事実。4足は黒。

 

どうやら僕は、限りなく怠惰なようだ。

 

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