【Wall Street(ウォール街)】1987 20世紀フォックス配給
監督:オリヴァー・ストーン
出演:マイケル・ダグラス(ゲッコー)、チャーリー・シーン(バド)
マイケル・ダグラスの衣装を監修したのが、アラン・フラッサーだということを『Men’sEX2019年2月号』で知り、観てみた。
アラン・フラッサーといえば、やはり、『DRESSING THE MAN』なわけで、ちょっと洒落たテーラーやセレクトショップには置いてある。こっちについても、読みすすめているけど、まずは、とっつきやすい映画から。
【指摘事項】
- 証券会社の職場風景
なんだか安心する。シャツだけの人。袖まくりが肘を超える人。ボタンダウンのシャツ。センターベントのジャケット。
日本のありふれた景色は、アメリカであっても変わりがあるわけではない。このことからも、海外の人なら全員がバッチリ装っているわけではないのは分かる。
- ゲッコー(マイケル・ダグラス)初めての登場
彼に憧れて投資銀行に入る人や、同様の格好をする人が増えたというのはわからなくはない。単純にかっこいい。
ここで指摘したいのは、2つ。 1つは印をつけたブレイシーズ(サスペンダー)とズボンのタックの部分。タブ式のサスペンダーにタックは2つ(インタック)。ここは、真似したいクラシカルなアイテムチョイスで、さすがアラン・フラッサーというところかもしれない。ギラギラ感が出ているのも、ね。
もう1つはクレリックシャツ。あぁ、いかにもウォール街の人って感じが出ている。とはいえ、やはりシャツが目立つと思うし、キャラ以外で普通の人が着るにはやっぱり主張が強いなぁと感じてしまう。
- ゲッコー 車内移動
2つ。まず、濃紺のスーツとサックスブルーのシャツに見えるカフス。キャラには似つかわしくないほどの控えめな選択。単なるシルバー。十分に主張はあるけれど、着こなしとして落ち着いて見える。指輪との兼ね合いもあるのだろうけれど。こういうのは、安心する。
もう1つは、タイが0.5cm以下のドットで、チーフはシルクのパフ(当然柄はタイと違う)という安定感。
全体として見ると「目立ってんなー」という感じで、多くの人に影響したのだろうけれど、1つ1つを見ると、それは安全かつ地味で、お洒落というよりもコンサバティブ。好感が持てるところだと思う。(セリフや役は抜きにして。)
- バド(ちょっとゲッコー色を帯びてきた頃)
最初の登場は、ボタンダウンのシャツに、ゴージラインの低いノッチドラペルのジャケットだったバド。ゲッコーとの付き合いも増えて、金回りがよくなった頃かな。ピークドラペル。クレリックシャツ。ただ、多分、タイとチーフが同じような。。。いずれにせよ、ボタンダウンのシャツから、セミワイドのシャツになったのは、大正解。そして、シャツの衿先がちゃんとジャケットに仕舞われていることも、良い。
ゲッコーもバドも、シングルノット(フォーインハンド)でタイを締め、ディンプルをつけている。たぶん、というか間違いなくアラン・フラッサーの指導があったはず。
- ゲッコー 株主総会
株主総会でのこと。投資家のゲッコーは不利な立場というシチュエーション。ここで、無地の濃紺のスーツ、白のセミワイドカラーのシャツ、小紋の紺タイ、白のチーフをちゃんと選べるところがさすが。派手なだけじゃな、ちゃんとTPOをわきまえることができる証左。まぁ、ピークドラペルだけれど、それはキャラ上仕方ないか。
結果として、彼は会場の株主の心を掴む。
- ゲッコー バドを裏切ったあと
ピンホールカラー、それもゴールドを持ってきて、ピンクのクレリックシャツ(それもストライプ)にレジメンタル。ゴテゴテな感じで如何にもGreed(強欲)さが出ていると思う。ただ、これでも許せるのは、次の点が着こなしとして良いから。
- レジメンタルタイとシャツのストライプのピッチ(間隔)が異なること。
- スーツが無地でおとなしいこと。
- ラウンドカラーで、柔らかさとピンクという色がマッチすること。
- フォーインハンドでタイを結ぶことで、ノットの主張が少ないかつ、ちゃんとピンホールカラーの狭い開きをキレイに埋めていること。
つまり、ディテールがしっかりしていれば、色や柄を散らしても、まとまるという例だと思う。
【雑感】
映画や役の求めるものがあるので、「いい着こなし」をただすればいいというわけではない中、基本とルールに忠実であることが垣間見れるいい映画(衣装)だったと思う。
特にバドとゲッコーの着こなしの差は当初雲泥の差だった。バドが欲を形(マネタイズしていく)にすることで、次第に身なりもゲッコーに近づく様はなんとも。そして、最後にまたプレーンな着こなしになる。一方、ゲッコーは変わらないまま。衣装を見るだけでも、オリヴァー・ストーンが映画で描きたかったことが見えるように感じた。
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