日経2018.8.7 夕刊 「顧客を観察し合わせる」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33887060X00C18A8EAC000/

 

 

「相手の服装を観察し合わせることが基本です。」

「相手がジャケットを着ていればジャケットは着用しないがネクタイはつけるといった配慮が必要です。」

 

もっともらしいけれど、僕はそうは思わない。

 

服装は、相手ではなく、どのような場合でも、TPOを最優先。お祝いならば、少しだけ華やかに。お客様に会うのであれば、できうる限りで失礼のない格好。お詫びにいくならば、その気持を表すべきであって、どのような場面であっても相手に合わせることなど、決して無い。決して、カジュアルなトレンドがあるから、ないからとかも、全く関係ない。

また、相手に合わせることができるのは、服飾に対するセンスや教養という意味で相手の知識量もワードローブも自分よりも限られている場合だけ。

つまり、能力が上の相手に合わせることはできない。これは、どのような場合でもそう。例えば、英語力についても、自分よりも優れた人がどれほど優れているのかは、測ることなんてできない。でも、例えば、英語を習い始めた中学生の能力はどれくらいか?と問われれば、高校まで行った人ならある程度相手の能力は把握できるし、使う単語も合わせることができる。英語ネイティブが日本人の英語学習者のレベルに合わせてくれるのと一緒。つまり、相手に合わせることなど、たいていの場合できないという前提であるほうが、謙虚な姿勢とも言える。相手を観察“できる”という前提(あ、僕もテレビのスーツにあれこれ言っているから一緒か。苦笑)だというのは、傲慢さだと感じる。でも、自分もよくやってしまうけれど(例えば、サッカーを見て、あのプレーはだめだ、なんて言っちゃうのも、本質的にはただの虚言でしかない)。

 

次に、ジャケットを着ているとか着ていないにかかわらず、尊敬すべき相手と接する前にジャケットを着用しないことは、無礼すぎる。礼儀という部分で、ビジネスマンとして失格なように思う。例えば、運動場で会うとか、外の出先から戻ってきたばかりだとか、工場とか、そういう場所であればジャケットを着ることが慇懃無礼に映ることも大いにある。そのような場合(この場合も、TPO優先、麻でアンコンとかのジャケットを持ってくるとかで工夫はできるとは思うけど)を除き、28℃に調整されたオフィスで会うならば、ジャケットは当然着用すべき。

 

ネクタイの持つ力=ジャケットの持つ力という単純な加減で男のスタイルを捉えていることにも、腹立たしさが残る。

 

まず、男子のスタイルでジャケットが必須であることは、すでに述べたとおり。その上で、ネクタイを着用するのか、しないのか。ジャケットやシャツの形や素材にもよる。ネクタイは何も“畏まっていること”を表す機能が主な機能ではないというのは、世の中のネクタイを見ればすぐに分かる。ただ、同時にネクタイをしていると、なんとなくちゃんとして見えるというのも事実。

では、ネクタイは何のためにするのか?温度調節ができるわけでもなければ、付けているから仕事がはかどるわけでもない。単なる150cm程度の高級な布だ。つまり、ここではっきりするのだけれど、ネクタイは装飾品ということ。“見られる”ためだけに存在している。だから、ネクタイをする理由を述べる事ができる人はたぶんいない。(僕も言えない。)ただ、誤解を恐れずに言い切れば、アクセサリーの類。だから、ネクタイは飾るために必要なら足すものであって、マストとは言えない。また、ネクタイを付けているという事実よりも、“どのようなネクタイ”をつけるのかが問われると思っている(僕は夏でもネクタイはするけど)。

TPOをちゃんと読み取り、それに適切に自分と服装を溶け込ませられるのか?という“配慮”を問われているのであって、決して、相手という個人に合わせるのではないし、ジャケットをぬいでいて、ネクタイをつければ畏まっていることになる、という単純な話ではない。

 

すべてはTPOが支配する。

 

したがって、「明るい色を着たほうが『面白いことをやってくれそう』」とか、「海外では(服装が)個のアピールという認識が強い」だとも思わない。

TPOをわきまえないならば、それは社会性のなさを示すだけであって、個性的というよりも、むしろ、Crazy。海外だとしても、大抵の式典やオフィスなどでは、それ相応の落ち着いたスーツスタイルもしくは、ジャケット姿しかみない。そこで、個性を出そうというのは、TPOというのを無視している自己主張の強い人でしかない。僕が世界のあらゆることを知っているとは言わないけれども、少なくとも、それなりの役職にある人たちの装いは、個性的と瞬間的にわかる服装からは程遠いと断言できる。

国を問わず、オフィシャルな場で自己主張の強さがにじみ出る人が好かれることは、まずもってない。

 

 

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