【エッセイ】戦争映画とチーフと

1週間に1回映画を見るとするなら、年間に52本。

図々しくも80歳近くまで生きるとして、残りの人生で2,000本ほどの映画しか見られないことになる。2,000か。

 

『シンドラーのリスト』を久々に見返す中で、とても美しいワンシーンに気がつく。1,100人のユダヤ人をアウシュビッツからシンドラーの工場に戻してすぐ。シンドラーが手を拭きながら、司祭に言う。「(今日:金曜日は)君らの休息日だろ」と。そうすることで、ユダヤ人たちは、瞬間的だとしてもやすらぎを得る。シンドラーが前半のギラギラした経営者から、変わった様子を象徴する1つの場面。スピルバーグ監督が、実話をあまりに美化したかどうかということは棚上げにしても、このシーンで手を拭いたチーフを胸ポケットにしまう姿は、あまりに美しい。

 

 

これが、お尻のポケット(ピスポケット)にハンカチを収納するシーンだったら。

スーツにシワが生まれるし、なんだか大切なセリフを言ったのに、仕草として無粋。

 

すでにチーフは胸ポケットにあるのに、ハンカチが別にあったら。

無粋。却下。

 

『プリティ・ウーマン』のように、女性にチーフを貸すシーンだったら。

うん。美しいことに違いがないけれど、それはエロスを背景にする。

 

 

 

『愛』という言葉たちが、美しいことには疑いがないし、それぞれに上下関係や、重要度に差があるわけでもない。だけれど、エロス(男女間の愛)に結び付けられがちなチーフというアイテムが、アガペー(博愛)やフィリア(友愛)という概念に結び付けられるシーンは、そう見られない。それは、現実でも。

 

戦闘シーンのない戦争映画繋がりで、大島渚の『Merry Christmas Mr. Lawrence』を思い出す。つい見返してしまう。2時間。数年前までVHSしかなかったのに、Amazon Primeで見れちゃう時代なのね。

いい映画は見返してしまうから、これを考えに含めないといけないね。2,000本はちょっときつい数字かもしれない。

2本とも観ると5時間20分。素敵な週末になると思うよ。

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