【エッセイ】爪とイヤフォンの分配器

Apple の新製品発表が世間的にそんなに物珍しくなくなったとしても、毎回新製品をレビューして、それらを導入してみたらどう生活が変わるのだろうかと想像するルーティーンは、もう15年以上続いている。

今回のiPhone 11 と 11 Pro にもカメラ以外にも気になる機能はあるし、大抵の場合、それらの新機能は好ましい変化。そんなワクワクな中で、1つふと寂しい気分になる機能変更。それは、「オーディオの共有」。1台のiPhoneで2組のイヤフォン(Air Pods かBeatsのものしか対応していない。)から音を流せるという機能。

 

遡るとiPhone 7からイヤフォンフォンジャックの端子が消えて、Lightningだけになったときから、いつかこの日が来るとは思っていたけれど。でも、まだiPhone7や8だったら、2人で同じ曲を聴くときは、端子を準備しないといけない。

カップルのうち、1人がイヤフォンを分配するジャックを持っていて、で、お互いのイヤフォンで同じ曲を聴くというやつ。あれね。誰か他の人がするのを観るのが、とても好きなの。ほぼ見ないし、ま、2人で片耳ずつ聞けばいいんだけれど。家だったら、スピーカーから流すわけで、これって公共の場所でしか成立しないんだよね。

 

決定的だったのは、ジョン・カーニー監督の2作目、『はじまりのうた』。これを見たら、人生には分配の端子がマストだと感じる(偏りすぎた意見)。この映画以来、別に全く使わないとしても、分配の端子は捨てることができない。

(写真はここからお借りしました。)

 

世の中、今後iPhone11が広がって行く中で、きっとカップルが曲をそれぞれのイヤフォンで聴きながら、公共の場所で、目をみて会話するなんてロマンチックなシーンは観られないし、今後の映画では、描かれもしないだろう。

 

 

話は変わって、爪。

職場で周囲のスーツ姿が気になることはそうない。電車の改札を通り過ぎれば、ガラガラとスーツについてのフィルターは閉店するようにしている。もっとも、気になっていたときもあるのだけれど、野放しにしておくとスマートフォンの通知機能のような煩わしさがある。簡単な解決方法はスマートフォンと同じ。通知を消せばいい。

 

ただ、どれだけOFFモードにしていても、目に入ってしまうのは爪。爪先が伸びまくって、白い部分が多ければ多いほどにうんざりしてしまう。親指だけとか小指だけ長いというのも。そんなに伸ばして、何に使うのだろうか。

 

色々と手入れが好きだから、それなりにするけれど、おっさんの眉毛はある程度伸びていても気にならないし、鼻毛もほんの少しなら、「早く気が付きますように」って思えて、なんだか微笑ましい瞬間を見たかのような気分にもなれる。肌のシミやシワも、歳とともに増えることが普通なわけで、変な若作りよりはそのままのほうが渋い。

でも、爪だけは長いと、背中がぞわっとしてしまう。無粋だし、余計なお世話だけれど、爪の長い彼にパートナーがいると思うと、よっぽど寛容なパートナーに恵まれたのだろうなとも感じる。

 

 

そう。

「この曲いいから」って、分配の端子とイヤフォンをごそごそ鞄から出しながら、パートナーと同じ曲聴くとき。きっと彼女は爪に視点を落とすし、爪が長かったうんざりされちゃうと思うんだ。

だから、切っておいたほうがいいと思うよ。

 

 

 

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