【エッセイ】カジュアルな装いにおける文具という武器

先週一週間、モンゴルの方の受け入れ(アテンド)の業務をしていた。

政府関係者を含む、大手企業の役員、部長クラスと言っても、この日本の梅雨でスーツを着るような人もいないし、まして、ネクタイやジャケットを着用する人たちもそういない。女性は初日民族衣装だったけれど。

彼らのシャツ姿についてあれこれ言いたくなるのは、日本のビジネスマンを見て感じることと大差なく、僕の見る限りだけれど、国に関わらずビジネスシーンはカジュアル化の傾向にあるんだと思う。もっとも、受け入れる日本側の企業や関係者もクールビズということで、半袖シャツにネクタイをしないスタイルだし、季節もこの梅雨時期。彼らの装いが問題だと言いたいわけじゃない。

 

取り上げたいのは、文具。

 

長い前置きになったけれど、そういうカジュアルな装いであったとしても、いや、むしろそういうときこそ、文具は武器になり得るよねって雑感。(靴もそういう意味合いがあるとはおもっているけれど、それはまたの機会で。)

 

訪問は、1日2社。いずれも有名な、もしくは、業界においてはキープレーヤーの法人。通常は、広報部隊が海外側の対応をしてくれる。親切に対応してくれるし、事前の打合せや資料提供、情報公開の範囲設定、メールの一字一句。そのいずれも無駄がなく、英語でも日本語でも対応してくれる。日本で仕事するのは、こんなに楽(仕事に滞りが少ない)なのだと感じる瞬間。

そして、文具は武器だなってつくづく感じる瞬間。

 

初めて会って、話して、メモを取り、会議室をあとにする。この一連の行動の中で相手の目に映るのは、名刺入れ、ノート、ペン。(ときに、時計も。)

服はやっぱり日によってバラツキが生まれるし、特に梅雨時期だと、「雨」を意識した装いとなり、機能が優先されることもある。また、カジュアルビズというマジョリティにちゃんと合わせるというような大人の対応をされていらっしゃる方もいるはず。

一方で、スーツと違って、ペンは基本的には衣替えがあるわけでもない。何かこのペンを使うから失礼というような決まりが厳しいものでもない。選択は個人の自由。でも、必ず人の目に触れる。靴以上に、メーカーの判別は簡単。各メーカーに特徴があるし、靴よりも物理的にも目に近い位置で見られるから。だから、文具や名刺入れのほうがその人となり、っていうのがより色濃くでるんじゃないかなって思う。

 

名刺入れは気を配っていらっしゃる方も多い。そう勧める情報も多い。使う期間も革の耐久性を考えるなら3年から5年だろうから、ここにお金を投じるのは間違いじゃないとも思う。

ノートは消耗品とも考えられる。価格に関わらず、良いものも多い。

ちょっと話がそれるけれど、メモなら、ROHDIAやMoleskineも悪くないとおもうけれど、個人的には価格とその品質から、コクヨの測量野帳を勧めたい。固くて丈夫なつくり。インクが滲まない紙。主張の強くない罫線。

https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/fieldnote/60th/ノートにも良いものはあるけど、ちょっと手が出ないというのが正直なところかも。棚上げにしておこう。

 

本題のペンそれ自体は失くさない限り半永久的に使える。リフィルの交換は必要だけれど。だけど、みんな案外使い捨てなのは、なんだか不思議。

仕事の場面では、使い手の考えや意見を形にする。もしくは、対する相手(話者)のそれらも形にする。これだけデジタル化が進もうとも、365日使わない日はないし、手元を彩る。ネクタイをしていたら、「外せば」と言われることもあるけれど、良いペンを使っていて「そのペンを使うな」と会社に文句を言われるわけでもなければ、クールビズのように季節によって大幅な変更をするわけでもない。水性と油性、太さの違いがあるくらいで。特別な知識を必要とするわけでもない。

 

そう、結局30名近くの日本企業の方と会ったけれど、一人だけだった。Parkerのボールペン。それ以外は、みなプラスチックのペン。もう一人、三菱のSIGNOで揃えられている方。後者の方は書き味を重視されているのだろう。3色とも、0.28mmを使ってられた(この人は一本、シェーファーと思うけど、重厚感のあるボールペンも持っていらっしゃった)。お二人とも、カジュアルなポロシャツだったけれど、きっとそれ相応の理由があってのことだろうと、勝手に肯定的に解釈もした。

 

長々書いたけれど、結局何を使うのも自由で、別にプラスチックのペンでもいいとは思うし、文句を言うものでもない。でも、先にあげたParkerの方とSIGNOの方は名前も覚えているし、好感を持った。僕が文具好きだからっていうのも多分にあると思うけれど、どこかのノベルティを用いる方よりは、確実に仕事に対して真摯じゃないかなって思う。だって、少なくとも数百円、数千円の自腹を切っているのだから。

 

何も1万円以上するペンを買えって言っているわけでもない。数千円で十分だと思う。それだけで、僕のように好感を勝手に抱く人間がいる。

 

冒頭のモンゴルの方。6名の中、5名はホテルの名前が印字されたボールペンで一週間を過ごされていた。一人だけ、LAMYのSafariを使っていらっしゃった。僕が彼に好感を持ったことは、説明不要だろう。

先のParkerもこのLAMYも5,000円もせずに手に入れることができる。リフィルも数百円。一本だけ良いペンを持つこと。何本もペンを持ち、都度捨てるよりもよっぽど現代人としても倫理的な行動だと思う。

 

と、思いながら研修を進めていると、僕の同僚のペンに目が止まった。

「●●建設」ん?なぜ?

 

あ、そうだ。一つだけ良いペンを意図的に買わない理由があった。

「よく失くす」この場合は、使い捨てのペンを必要とする。

きっと、この人はペンをよく失くしてしまうのだろう。

そう思うことにした。

 

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